モリブデン入りグリスはゴムに悪い?リンクロッドの整備で本気で調べた結論
最近リンクロッドを交換する時に、ベアリングについてなんとなく理解していたものの、メンテナンスするのは初めてだったので、色々調べていく中で、一番混乱したのがグリスについてでした。
まぁ、安牌を取るならバイク用のリチウムグリス塗っておけばいいのかもしれませんが、
リンク周りの、特にベアリングなんて普段触らないし、触る機会も多くない。
出来ればそんなにバラしたりしたくないので「出来るだけ良いグリス」を使いたかったのです。
ある記事ではリチウム万能グリスが無難と書いてあったり、
別のところではウレア系が耐水性に強くて最適と紹介されていたりします。
さらにモリブデン入りグリスになると、極圧性があり、リンク向きという意見がある一方で、ゴムや樹脂に悪さをするから避けた方がいいという声もあって、どれを信じればいいのか分からず。
特に気になったのがモリブデン入りグリスの扱いです。
リンク周りはニードルベアリングとスリーブ、そしてダストシールというゴム部品がセットになっているので、もし本当にゴムに悪影響があるなら使えないことになります。
そこで今回は、実際に自分で作業した経験と、調べられる範囲の科学的な情報をもとに、
モリブデン入りグリスは本当にゴムや樹脂に悪いのか
リンク周りに使って大丈夫なのか
どんな使い方なら安心できるのか
このあたりを整理&引用してみました。
僕と同じように、グリス選びで立ち止まっている人のヒントになればうれしいです。
モリブデンは本当にゴムに悪いのか?
※ここで出てくるモリブデンは、二硫化モリブデン(MoS₂)の事です。有機モリブデンではありません。
モリブデン入りグリスについて調べていくと、「ゴムに悪い」という意見が目立つ一方で、MoS₂そのものがゴムを攻撃するという明確な科学的証拠は意外と見つかりません。
結論から言うと、モリブデン自体は悪くないです。
そこで、Wikipediaやグリスメーカーから出てる資料から「事実として確認できる部分」を整理しました。
まずはモリブデンに潤滑性がある事を確認します。
硫化モリブデン(IV)は六方晶型の層状結晶構造を持ち、各層はモリブデンの層の両面を硫黄で挟んだ格好になっている。モリブデンと硫黄の結合が強固であるのに対し、層と層を繋ぐ硫黄同士の結合は弱いため、せん断力が加わると容易に層間がすべる。このため摩擦係数が低くなり、潤滑性を発揮する。
また、グリス等を製造販売している海外のメーカーサイトから、
モリブデンを含む潤滑剤の商品の説明欄に、
「プラスチックとゴムの適合性が良好」すると記載してあります。
僕個人的な意見ですが、もしモリブデンがゴムや樹脂に攻撃性があるとすれば、この一文は入れられないと考えます。
原文を引用↓
「Good plastic & rubber compatibility」
「Compatible with most natural rubbers and almost all kinds of synthetic rubber」
日本語訳↓
「プラスチックおよびゴムとの良好な適合性」
「ほとんどの天然ゴムおよびほぼ全ての種類の合成ゴムと適合します」
これらの情報から、MoS₂が研磨材のように
ゴムを物理的に削る性質を持つとは考えにくいし、
溶剤のようにゴムを溶かすような作用がある事も考えられません。
ここから先はもう少し踏み込んで整理していきます。
① モリブデンは「溶剤系」ではない
モリブデンは、
- 固体
- 不溶性
- 層状結晶による物理的潤滑
ゴムに浸透して化学反応を起こすタイプではない事がわかります。これはWikipediaや化学資料から読み取れる物性の話。
② モリブデンは「化学的に反応して潤滑する物質ではない」
モリブデンの潤滑メカニズムは:
- 分子がゴムと反応する → ✕
- 表面に層が乗って滑る → ◯(物理現象)
だからゴムを溶かす・分解する反応経路が存在しないというのが重要な論点。
③では物理的に攻撃する論はどうか?モリブデンの硬度について
調べたらモリブデンは硬い物質ではない事がわかりました。
- モース硬度:約 1~1.5
- ゴムやアルミより特別に硬いわけではない(人間の爪が2.5)
研磨材として使われる硬度ではない
「どっちがどっちを傷つけられるか」で決める硬さの尺度です。
数字が大きいほど硬くて、他のものを傷つけやすい。
※ひっかいた時の硬さを表す物なので衝撃は別です!
④モリブデンは結晶構造
Wikipediaの引用でもあった通り、モリブデンは
層状結晶構造(グラファイトと同じ系統)です。
- 層と層が簡単にズレる
- せん断しやすい
- 砕けやすく、角が立ちにくい
削るより滑る方向に働きます
モリブデンについてまとめ
モリブデンはゴムを溶かす?→溶剤ではないので溶かさない
モリブデンはゴムを物理的攻撃する?→しにくいと考えます。
ゴムに悪さをしている正体
モリブデングリスがゴムに影響を与えるケースでは、モリブデンそのものの攻撃性が原因ではなく、グリス全体の成分(基油や添加剤)とゴム材料の化学的相性が関係するとされています。
もう少し深堀りしていくと👇️
一番多い原因:基油や添加剤の相性
ゴムは素材によって、
- 鉱油で膨潤する
- 合成油で硬化する
- 可塑剤が抜ける
といった反応を起こします。
バイクのグリスシール(ダストシール)は、ざっくり
- NBR(ニトリルゴム):オイルに強い・汎用
- FKM(フッ素ゴム:バイトン系):耐熱・耐油強い
- EPDM:ブレーキフルード・水に強いが、油に弱い(※重要)
- シリコンゴム:耐熱に強いが用途限定
みたいに材質が違います。
NBR/FKMは鉱油(エンジンオイル系)と基本相性が良く、
EPDMは鉱油で膨潤・劣化しやすいです。
ただ、ほとんどのグリスアップ目的で使われるグリスは、鉱物油がベースですし、
Z900RSのリンク周りに使われているグリスシールはNBRかFKMなんじゃないかなと思っています。(グリスが塗布されてる場所にグリスにやられやすいゴムをわざわざ使わないよな流石に?という考えです)
この、モリブデングリスはゴムに攻撃性があるというのは、基油の話と混ざってるんじゃないか?というのが僕の考えです。
まとめ
モリブデン自体はゴムに攻撃性があるとは考えにくく、
ゴムとの相性があるのは基油や添加剤だということがわかりました。
なので「二硫化モリブデンが配合されている=ゴムに攻撃性がある、溶かす」ではないというのが僕なりの結論です。
リンク周りに最適なグリスについて記事にしたので良かったら見てみてください。👇️

モリブデンってゴムに悪いの?と疑問に思っていた方の参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた!

